Good Case/活用事例紹介 近畿社会福祉専門学校篇

日本の介護を学び、現場で働く外国人のためのWebサイト「にほんごをまなぼう」
2021年春 公益社団法人 日本介護福祉士会 国際介護人材支援チーム 発行 (R2 厚生労働省 介護の日本語学習支援等事業)

外国人留学生受け入れのパイオニア養成校は、
「にほんごをまなぼう」の導入で、留学生の日本語能力向上を目指す!

利便性と由緒を兼ね備える大阪城北詰に位置する近畿社会福祉専門学校。
寝屋川を挟んで、大阪城を望むことができる絶好のロケーション。
日本の今と伝統を感じながら、介護を学ぶ留学生たちは、とにかく、明るく元気!
「にほんごをまなぼう」を導入して、成果を上げている
養成校の皆さんに話をお伺いしました。

近畿社会福祉専門学校
校長

桝 豪司さん

(ます たかし)

最大の壁は日本語

ホスピタリティが高い、外国人介護人材

こちらの外国人留学生は、明るく、元気いっぱいですが、
桝先生の外国人介護人材の印象について、お聞かせいただけますか?

時代の流れとして、今の日本の介護サービスの質を担保するためには、外国人介護人材の力を借りる以外の手段はないと思います。留学生は、本当に明るい学生が多い。いろいろな場所で言われていますが、留学生のホスピタリティは非常に高いと感じています。フィリピン、べトナム、インドネシア ・・・EPAの3カ国も含めて、ミャンマー、カンボジア、モンゴル・・・どちらの国でも、留学生の接遇精神は非常に高いと思います。

明るい雰囲気の貴校はどんな養成校なのでしょうか?

本学は奈良の天理にある 医療法人 健和会 奈良東病院 が母体の学校法人です。介護福祉士の2年制の単科で26年間の歴史の中で、卒業生は2,000人を超え、大阪、兵庫、奈良で介護福祉士として就職しています。同じグループでは奈良の吐山で2020年4月に日本語学校HILS、介護福祉士養成校 奈良介護福祉中央学院を開校し、留学生教育をグループ全体で積極的に取り組んでいます。

外国人介護人材の導入ときっかけ、経緯についてお聞かせください。

今の日本のように、介護業界の労働者不足が叫ばれる遥か前から、私どもは、外国人介護人材を受け入れることに関して、僭越ながらオーソリティーでした。本学のグループでは、10年程前からEPAの外国人を積極的に受け入れており、育成に関しても成果を上げています。本学も2016年度という、早い段階から留学生の募集、入学を受け入れていました。最初は4名、2年目は20名、3年目が30名、4年目が40名、5年目は35名です。定員の約半数は留学生です。

エージェント、日本語学校、養成校、受入事業者、4本の柱で支える。

外国人介護人材の育成のために大切なことをお聞かせください。

私の持論なのですが、良いエージェント、良い日本語学校、良い介護福祉士養成校、良い送り出し先(社会福祉法人、株式会社、医療法人など)の4つが一体となって、4本脚の椅子で、ひとりの人材を支えるようなイメージで、卵をやさしく温めるように、ひとりの留学生を支えることが大切だと思います。4本の脚のどこかに過重負担が掛かっていては駄目です。留学生ですので、ホームシックにかかったり、フィリピンの学生はクリスマスに帰りたかったり、ベトナムの学生はテト(旧正月)に帰りたかったりします。恋愛ももちろん人ですからあります。国民性や一人一人の個性をある程度、理解した上で、先の4者が一歩ずつ踏み出して、ひとりの留学生を支えるというのが、理想的であると考えております。

留学生の介護福祉士国家試験合格率向上のための「にほんごをまなぼう」

外国人介護人材には、どんな課題がありますか?

唯一にして、最大の壁は日本語です。それが、とてもとても高い壁だと思います。日本語能力試験N3、N4の留学生が多く、介護の専門的知識を学ぶには、日本語能力が不足していると思われます。会話はできても、漢字を使って文章を書くことや、読解ができなければ、国家試験の合格は難しい現状があります。今後、国家試験の合格率を上げることは、全介護福祉士養成校の命題ですので、「にほんごをまなぼう」プロジェクトは、大変、価値があるものだと思います。

留学生の接遇精神は非常に高いと思います。
授業風景

授業風景

近畿社会福祉専門学校
専任教員

帆足敬介さん

(ほあし けいすけ)

留学生全員が「にほんごをまなぼう」に登録

貴校における「にほんごをまなぼう」導入のきっかけをお聞かせください。

帆足 本学の外国人留学生の1年生は、日本語能力試験N2~N5まで、さまざまなレベルの学生が多く在籍しております。介護福祉士の養成過程での専門用語の漢字を覚えられない、テキストも読めない学生もおり、育成の課題となっておりました。そんな中、姉妹校で留学生率が100%の奈良介護福祉中央学院で「にほんごをまなぼう」を本学に先立って導入したところ、一定の効果が見込めそうとのことで、本学でも導入して、留学生の日本語能力向上を目指して、取り組んでいくこととなりました。今では、留学生全員が「にほんごをまなぼう」へ登録しており、着実に取り組む留学生が増えています。

実際に導入してみて、「にほんごをまなぼう」にどのような印象をお持ちでしょうか?

帆足 「日本語を勉強しないといけないよ!」という言葉だけで、学生自身が意欲的に学習することはなかなか難しいですが、「にほんごをまなぼう」の良いところは、達成状況を教員側も把握できて、生徒と共有できるので、教員から学習状況に応じて声掛けをすることが、学生のモチベーションアップにつながり、積極的に取り組む学生の人数が増えているのではないかと感じています。また、スマートフォン、タブレットを使って学習することができるので学習しやすいですし、ちょっとした「すき間時間」に学習することもできるので、学生自身が自律的に自分のペースで学習することができるのではないかという印象を持っております。

学生のレベルに応じた内容を学ぶことができる

「にほんごをまなぼう」を活用して、
介護現場で活躍できる人材の育成を目指す!

今後、「にほんごをまなぼう」をどのように活用されていきますか?

帆足 「にほんごをまなぼう」は、まず事前テストがあって、そこからの学生のレベルに応じた内容を学ぶことができるようになっておりますので、本学のように、さまざまなレベルの学生がいる学校では、積極的に活用することで、効果が得られるのではないかと思っています。「にほんごをまなぼう」を活用しながら、学生が日本語を習得して、介護現場で活躍できるようサポートしていきたいと思います。

モチベーションが向上
明るく、元気な留学生

明るく、元気な留学生

桜と着物が大好き!将来の夢は、
社会の役に立てる
介護福祉士になること!

近畿社会福祉専門学校
学生

レーティ ニーさん

ベトナム出身
日本語能力試験:N2
スマートフォンで学習

大阪城をバックにパチリ。

大阪城をバックにパチリ。

日本に興味を持ったきっかけ、日本での暮らしの印象をお聞かせください。

レーティ 高校の頃から日本が好きだったので、留学生として日本に来ました。日本の綺麗な桜、綺麗な着物に憧れていたので、初めて桜の花を見たとき、二十歳の記念に着物を着ることができたときは、本当に嬉しかったです。

留学生としての生活はいかがですか。

レーティ 日本に来たばかりの頃、日本語がまだわからなくて、生活も大変なこともあり、毎日が不安でした。介護の専門学校に通いながら、高齢者介護施設でアルバイトをしても、日本語能力が足らず、日本人と会話もできず、仕事もミスをすることがありました。利用者様や職員とのコミュニケーションでは会話や返事ができず、言いたいことも伝えられずー人ぼっちの状態でとても辛い思いをしました。でも、日本で仕事をするためには、日本語能力を上げ、意思疎通を図り信頼関係をつくることが重要だと考えました。そして、職員との連携や高齢者の支援ができるように毎日、一生懸命勉強をしています。

将来の夢を掲げるレーティさん

将来の夢を掲げるレーティさん

日本の綺麗な桜、綺麗な着物に憧れて

「にほんごをまなぼう」を使って、
日本語を学習した感想を聞かせてください。

レーティ 「にほんごをまなぼう」はたくさん、良いところがあると思います。日常生活の中で使っている言葉がよく出ますので、留学生には覚えやすく感じます。小テストは面白いですが、引っ掛け問題もたくさんあって、間違いやすいところもあります。日本語のレベルが高ければ高いほど面白く、もっと深く調べたい、勉強したいという気持ちが高まってきます。

とっても意欲的なレーティニーさんの将来の夢をお聞かせください。

レーティ 私の将来の夢は、国家試験に合格し、介護福祉士になることです。自分が持っている力を利用者様や誰かのために使いたい、助けたいと思っています。介護福祉士になって、日本でもベトナムでもみんなに安全で安楽な生活を提供していきたいと思っています。自分の家族だけではなく、社会の役に立てる介護福祉士になることを目標として、頑張っていきます。

信頼関係をつくる

鬼滅の刃がお気に入り!
世界一の日本の介護を学ぶため
に来日!日本とフィリピンに
貢献する介護福祉士を目指す!

近畿社会福祉専門学校
学生

メングリョ レメリンさん

フィリピン出身
日本語能力試験:N3
スマートフォンで学習

多言語に対応

日本に興味を持ったきっかけをお聞かせください。

メングリョ 子どもの頃、日本のアニメを観たことです。学校から帰って、テレビでセーラームーンやドラゴンボールを観ました。楽しかったですね。日本の映画も好きです。父はスラムダンクが好きで、私もドラえもんの映画を何回も観て泣きました。今は、歌手の米津玄師さん、アニメの鬼滅の刃がお気に入りです。

そんなメングリョさんが、どうして日本で介護を勉強しようと思ったのですか?

メングリョ 私の妹が日本で10年以上、介護の仕事をしており、日本の介護福祉士の技術が世界でも一番と言われ、技術だけではなく、人間性も向上すると日本の介護について聞かされていました。私は昔から日本が好きでしたが、妹からこの話を聞いたことで、ますます、日本で介護について学びたいという強い気持ちになりました。

「にほんごをまなぼう」を使って、
日本語を学習した感想を聞かせてください。

メングリョ とても便利だと思います。ふりがなが付いているので、わからない言葉があれば、辞書で意味をすぐに調べることができます。そして『介護の日本語』Webコンテンツはイラストや言葉の発音があり、介護の場面に応じた声掛けの会話のスピードが丁度良いので、わかりやすくて、聞き取りやすいです。その上、文字、音声ともに多言語対応しているので、本当に役に立ちます。

熱心に学習されていますね。メングリョさんの
将来の夢を教えていただけますか。

メングリョ 私の将来の夢は、学んだ日本の知識・技術を生かし、家族のため、そしてフィリピンや日本のために、必ず役に立てるような介護福祉士になりたいと思います。

日本の介護福祉士の技術が世界でも一番。介護技術だけではなく、人間性も向上

取材を終えて

積極的に外国人留学生を受け入れてきた近畿社会福祉専門学校。真摯な姿勢と留学生に対する思いやりが印象的でした。とにかく、明るく楽しい雰囲気の留学生たちの思い、情熱に胸が熱くなりました。これからも留学生たちが「にほんごをまなぼう」を活用して、介護福祉士の国家試験に合格し、日本と母国のため、介護の力になってくれることを祈ります。