令和7年5月19日。及川会長が第120回社会保障審議会介護保険部会に出席しました
今回の介護保険部会では、1.人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築や支援体制について、2.介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営支援について、等の議論がおこなわれました。
及川会長は、以下の4点について発言をしました。
(1)中核的役割を担う介護福祉士の育成・確保
・介護人材が不足しているからといって、どんな方でもよいということにはならない。介護職チームに、中核的な役割を担う介護福祉士がいて、その介護福祉士が適切に機能してこそ、適切な介護サービスが提供できる。
・その際、介護職チームの中核的な役割を担う介護福祉士に期待されていることとして、生産性向上の中核人材に期待されているような、業務改善等のプロジェクトマネジメントのほか、「多様な介護人材への指導・育成」「介護職チームによるケアのコーディネート」「チームメンバーの人材マネジメント」などなど、様々あるが、その役割を担うために必要なスキルを身につけるための機会が、介護現場の、すべての介護福祉士に十分に用意されているとはいえない。また、介護現場に、この中核的な役割を担うことができる介護福祉士がどの程度必要であるかも示されていない。
・このような現状を踏まえれば、介護人材不足への対応の在り方としては、新規参入の促進と合わせて、多様な人材を有効に機能させるためにも、中核的役割を担う人材の必要数を定めたうえで、育成と確保の方策の検討が喫緊の課題である。
(2)潜在介護福祉士の知見・経験の活用
・資料にもあるように、介護は地域における重要なインフラである。各地域には、退職した介護福祉士等の潜在介護福祉士が少なくない。
・他方で、地域住民の、介護サービスや権利擁護等の相談だけでなく、介護を担う者としての相談、介護技術のサポートなど多様なニーズに対応していく必要があり、また、地域住民がお互いに生活を支えあう仕組みを具体的に機能させていく必要があるが、その際、潜在介護福祉士の知見・経験は、極めて重要な人材資源であり、これを活かす道筋を構築すべきであり、また、潜在介護福祉士には、災害時の避難所や、施設・事業所における介護サービスの継続支援などの福祉対応も期待できると考える。
・しかし、現在、介護福祉士等の有資格者の届出制度はあるものの、十分には機能しておらず、潜在介護福祉士の実態把握がされていないのは課題であり、今後、潜在介護福祉士の所在・スキルを把握する情報基盤を確固たるものとしつつ、潜在介護福祉士が地域で活動できる枠組みの整備を進めるべきである。
(3)リーダー的な役割を担う介護福祉士の制度的な位置づけと報酬上の評価
・介護現場においては、介護職チームのリーダーが中核的な役割を担っているが、その具体的な機能や必要性については、制度上明確に定義されていない部分が多く、現場任せになっている。
・介護職チームは、リーダーを中核とし、障害のある方や介護未経験の外国人材、短時間勤務者などを含めて構成され、リーダーの指示系統のもとで介護サービスが提供されているが、その介護職チームのリーダーには、介護福祉専門職としての倫理観・コンプライアンス意識を前提として、「チームマネジメント」「リーダーシップ」「コミュニケーション・対人関係能力」「利用者毎の介護過程の展開」「多様な人材への指導・教育」「労務管理・シフト調整」のほか、「現場の業務改善をリードするマネジメント」などなどの役割・機能が期待されている。
・しかし、このリーダーの専門性や業務内容は、制度上明文化されていないだけでなく、上記で触れたように、全ての介護福祉士に対して体系的な研修機会が保証されておらず、責任や負荷に見合った報酬体系が確立されていない等の課題がある。
・介護現場におけるリーダーがその専門性と役割を十分に発揮できるよう、介護サービスの質の向上と持続可能性の確保が期待できるよう、これらの課題に向き合い、制度的な整備、研修の仕組みの整理、処遇改善を行うべきである。
(4)介護福祉士資格の有効活用
・現在、介護福祉士資格については、各施設事業所の配置基準における明確な位置付けがなく、中核的役割が期待されながらも制度的補完がないなど、介護保険制度上、この資格の存在価値が明確に位置けられていない。
・介護職チームには、介護福祉専門職の倫理観やコンプライアンス意識のある介護福祉士を位置づけるべきであり、その中核的役割を担う人材には、制度上の明確な位置付けと適切な処遇を担保すべきである。
・介護福祉士の資格とキャリアパス、そして処遇を結びつけることは、より質の高い介護サービスの提供や虐待や身体拘束の予防だけでなく、若年層の介護職志望にも希望を与え、現任者の離職防止にもつながるはずである。
・介護福祉士の位置づけの明確化は、介護サービスの質、利用者の安心の保障、介護業界の未来を目指すために必須の課題と考える。